〈あなたが、噛んだ……〉****7月5日 (土)

 カラスの耳はどこにあるか。
 図書館に行き、図鑑で調べた。やはり、頭、目の後方にあるらしい。しかも、律儀にちゃんと二つある、という。なぜ、鼻は一つなのに耳は二つなのか。
 どうでもいい?
 そう、どうでもいいんだ。だが、気に掛かり始めると、何となくほっておけない。一日、図書館の本を漁ることになった。

 人でも鳥でも獣でも、耳が二つあるのは、どうも、音源を定位するためらしい。眼鏡を掛けるために、神様が用意しておいてくれたのではなさそうだ。
 音が右から左へ流れている場合、右の耳は左の耳より早く音を聞く。何秒早く聞くかと言うと、音速は秒速三四〇メートル、たとえば人の頭の直径は十九センチ。つまり、0.00056秒。この時差を利用して、音源の方向を察知していることになる。

 どんなことにも理由がある。そういうことらしい。  

〈あなたが、噛んだ……〉****7月1日 (火)

「なんで、また、耳なんて噛んだのだろう?」
 市川支店長が言う。昨日のボクシングのヘビー級タイトルマッチで、試合中、タイソンがホリフィールドの耳を噛みちぎって失格負けになったことを言っているのだ。
 昔、伊東ゆかりの歌に、「あなたがかんだ小指が痛い……」何てあったのを思い出した。タイソンは伊東ゆかりのファンだったのか。
「愛撫のつもりだったとか……」
「世界タイトルマッチの最中だよ。和田君。SMの世界じゃないんだから」
「お腹が空いていたとか」
「いくら、ボクシングがハングリースポーツと言ってもなあ」
「でも、耳でよかったですよ。鼻じゃなくて」
「そうだな、耳は二つあるからな」

「ところで、カラスの耳ってどこにあるんですか」
「カラスに耳があるのかな」
「あるでしょう。耳がなければ、ギャアギャア鳴くわけないでしょうに。やっぱり目の横でしょうかね」
「人間と違ってそん必然性はないなあ」
「人間の場合はあるんですか?」
「あるさ。眼鏡を掛けるのに、そこに耳がないと困るじゃない」
 そんなものだろうか?


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