■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■     ■ 旅先からのたより          2004年6月10日発行 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■旅チャイナ■□□□□       □「楼蘭・砂まみれの記」(紅柳子さんへのインタビュー)        第一回:<砂> --------------------------------------------------------- 紅柳子さんのプロフィール: 女性。五十歳代。数年前の秋、友人と楼蘭ツアーに参加。 敦煌〜楼蘭〜ウルムチを走破。 ---------------------------------------------------------- (タイトルが「楼蘭・砂まみれの記」ということですが、実際に楼蘭を旅行さ れた印象としては、それほど「砂」の印象が強いものなのですか?) ──それは、もう。「砂に埋まってしまった謎に満ちたお城があるんだ」ぐら いの気持ちで出かけたんです。そしたら、そのお城に到着するまでが、砂砂砂 砂砂。十日間くらい、どこへ行っても砂。地球は砂で出来てるんじゃないかと 思うくらい。果てしない砂の向こうに広がっているのも、また、砂ですからね。 (砂漠にいるあいだは、砂漠にテントを張って泊まるのですね? ) ──そうです。寝るのも砂の上。 (食事は?) ──もちろん砂の中。風が吹くと砂塵が舞って、お粥を食べていても砂のふり かけご飯みたいになっちゃって……。 (はあ、粒が細かいんですね。カメラなんかは大変でしょう?) ──カメラ類はすべてビニールケースに入れて持って行ったんですが、案の定、 その中にも細かい砂がいっぱい入りこんで、帰国してからの機材の掃除や衣類・ 持ち物の洗濯が大変でした。ジャブジャブ水につけて何度も天日に干しました。 (帰ってもしばらくは砂を見たくない、と……。) ──帰った当座はそうですね。でも、「砂」というのは怪しい魅力を持ってい るものなんですね。今になって実感しています……もう三四年経っているので すが、今でも砂砂砂砂が夢に出てきますし、今ごろになって、捨ててしまった、 その砂たちが、何故か、いとおしく思われて……。  友人と二人で参加したのですが、彼女は服とかケースからでてきた砂を集め て小さなビンに入れて、毎日眺めているんです。私もそれを見て、自分もそう すればよかったって後悔しています。捨ててしまった砂に喪失の想いとでも言 いましょうか……。 (砂が夢に出る? うなされる感じですか? ) ──いえいえ。とても静かで果てしなく広がっていて、誘われている感じです。  沖縄に星砂ってありますね。星の形をした真っ白な砂。すくうと、手からサ ラサラと乾いた音をたてて。その向こうにはエメラルドグリーンの夢のような 美しい海があって。キラキラと海だけがあって。  星砂は本当は「有孔虫」という生物が死んで残した石灰質の殻ですからね、 死んでるものなんですけど、海の懐に抱かれているから、ちゃんと生きてて、 まるで安らかに寝息をたてているような感じですよね。 タクラマカンの砂漠も、どこか似ていて、静かに静かに生きている。そんな感 じで夢には出てきます。 (でも、現実の砂漠は厳しい。ずっと、同じ感じですか。砂漠って。鳥取の砂 丘みたいな……) ──五日も六日も走るわけですが、所によって砂漠も違います。細かい砂で砂 丘を造る砂もあれば、礫漠って言うのだそうですが角張った小さな石の砂漠も あります。  また、同じ砂でも、カチンカチンになった砂もあります。ロプノールの湖底 は、歩くと痛いですよ。砂と塩が一緒になって硬くなっています。靴底に当た る砂の感触は、もう岩と言っていいです。湖のさざなみがそのままの形でカチ カチに固まったって想像してみてください。壮大な波の彫刻です。それが三六〇 度。どこを見ても、その砂のさざなみしかないんです。 (はあ、そんな風景は誰も見たことがない。不思議な気持ちになるでしょうね) ──そんな所に一人で立ったら、気が変になるでしょうね。地球ではないみた いです。砂漠なら砂があってもいいじゃないですか。砂漠の中心で「寂しい!」 って叫ぶでしょう。でも、手にとる、一握の砂もないんです。  何もない全くの砂漠なんですが、砂もない。カチカチに固まって、全てを拒 否する砂の形。「何だこれは。これが地球か!」って。「動けよ!少しぐらい」っ て感じの砂漠。 (色はどうですか。土色でしょうか? それとも灰色? 場所によって変わり ますでしょうか?) ──そういう目では見ていませんでしたが……思い出してみると、所によって、 やっぱり違いますね。黄色だったり、灰色だったり、白っぽかったり。 (ふりかけご飯の色も場所によって違ってくるわけですね。) ──ふりかけご飯になりやすいサラサラしたところは黄色です。硬い礫のとこ ろが灰色。楼蘭では……薄茶色で表面が白。一瞬、月世界に降り立ったみたい な色感を持ったのを憶えています。あそこでは。 (なるほど。実際にこの目で見ないとうまく想像できない点もありますが、特 にロプノールの湖底の固まったさざ波とかいうようなところは……。)      ------------------------------------------------------        紅柳子さん、有り難うございました。今回は、『砂』のお話しを伺いました。  次回は、寝泊まりとか食事をどうされていたのか、ということを中心に伺いた いと思います。お楽しみに。          □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■旅チャイナ■□□□□      □旅先からのたより (公園)     -----------------------------------------------------  ◆天壇公園は老人たちの社交場。いくつものグループが自然発生的にできていま す。京劇のグループ。トランプ、太極拳、剣舞、社交ダンス……。  どうして、中国のお年寄りは元気なのですかね?  長生きをする、という意味ではないです。平均寿命なら日本人の方が長いでしょ う。世間とのつきあい、という意味です。  日本人は定年退職すると、世間から離れ、一人静かに枯れてゆく。  中国人は定年退職すると、新しい仲間新しい趣味を求め、公園に出かけてゆく。  マラソンでいうペース配分の違いでしょうか。  日本人は、三十キロぐらいまではスピードに乗った走りをして、エネルギーを 使い果たし、あとは徐々にペースを落としてゴールする。  中国人は、三十キロまではゆっくり走る。力を温存して、最後のラストスパー トに勝負をかける。  そうでしょうか。    □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■当「おたより」に連動した写真を、web-site『旅チャイナ』の「一期一シャ ッター」のコーナーに載せております。よろしければ、映像の「おたより」も ご覧ください。      http://www.tabichina.com/ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □このメールマガジンは、『まぐまぐ』( http://www.mag2.com/)を利用し て発行しています。 □解除はこちらから-----> http://www.mag2.com/m/0000114422.htm □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■発行者:和田正信 wada@tabichina.com ■発行者のホームページ: http://www.tabichina.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■