* 立派な羊飼いになるための質問コーナー *
このコーナーでは、皆様の想像力とセンスに溢れたご質問をお待ちしております。掲載時にはご質問の文章に手を加えさせていただく場合があります。また、匿名ご希望の方はその旨お書き添え下さい。
宛先は:hitsujikai@tabichina.com です。
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<羊飼いたちはお風呂に入りますか?>(1997.8.23)
パオの写真を見ましたが、お風呂はないですよね。羊飼いさんたちは、お風呂には入らないのですか?
(愛知県・佐溝司・45歳)
パオには、勿論、お風呂はありません。お風呂に入る習慣もありません。
私も佐溝さんと同じ疑問を抱き、ウユンピリカさんに尋ねました。「お風呂に入ったことがありますか?」、と。答えは、「ノー」でした。水とかお湯で身体を拭くだけだそうです。
私も一週間、パオに泊まっている間は、お風呂に入りませんでしたが、涼しい、乾燥しているし、汗はかかないし、何とも思いませんでした。
土地には土地の、民族には民族の習慣があるということです。
<パオというのはどんな住まいですか?>(1997.8.22)
遊牧民が住まいとしているパオとはどんなものですか? 写真がありますか?
(兵庫県・甲元美由紀・26歳)
中国語でパオ(包)、モンゴル語ではゲルと言いますね。組立も解体も、家族の作業で40分もあればできます。まさに、遊牧のための住居です。羊飼いたちは、家財道具一式を牛車に乗せ、どこへでも移動できるのです。なんと素晴らしい生き方でしょう。
写真を二葉お示ししましょう。外からと、中からと。
<羊飼いを止めたくなった羊飼い>(1997.8.17)
羊を追うのが嫌になった羊飼いはどうすればいいんでしょう?
(千葉県・岩瀬美奈子・28歳)
なかなか、哲学的な問いですね。ネコであることが嫌になったネコはどうするか、と同じくらいに哲学上の難問だと思います。
この夏私は内蒙古のシリンホトの大草原で、ウユンピリカさんという羊飼いの一家のパオに一週間ほど世話になってきました。もし、この問いをウユンピリカさんにしたとします。すると、彼は、何と答えるでしょう。
「走るのが嫌になったら、もう馬じゃないよ」。こんなところでしょうか。
<一生の間に食べる羊の数>(1997.8.14)
羊飼いは一生の間に何頭の羊を食べますか?
(東京都・島崎滋さん・32歳)
またしても島崎さん。今度は、人が食べる羊の質問。よく、次から次へと(どうでもいい疑問が)考えつきますね。
お答えしましょう。ズバリ。私の研究では、一般に羊飼いは、一年に十頭から十二頭ぐらいの羊を食べているようです。従って、六百頭から多い人で千頭ぐらいになるのではないでしょうか。
<蒙古のネコは魚を食べる?>(1997.8.13)
モンゴル人は魚を食べる習慣はないのではないでしょうか。と、すると、飼われているネコも魚の味を知らないのではないでしょうか。と、すると、モンゴルのネコは魚を好物としない?
(東京都・島崎滋さん・32歳)
島崎滋さん。前にもメイルいただいています。確か、モンゴルの犬は糞を食べるか? というご質問でした。今度は、ネコが魚を食べるか、というご質問。何となく、傾向が分かりますね。
それにしても、よくぞ、聞いていただきました。私もかねがね同じ疑問を持っていました。そこで、今夏内モンゴルに行った際に、シーチキンの缶詰を持っていきました。そして、ネコの前に、シーチキンと羊の肉を並べて、どっちに先に手を出すか、という、何というか、ネコ研究史上画期的と思われる実験をしました。
結果はどうだと思います?
答えは、羊の肉。
どうでしょう。ご質問のお答えになりましたでしょうか。
<羊の解体・羊飼いは歯を磨く?>(1997.8.10)
モンゴルでは羊をさばくのに、最初から最後までナイフ一本で済ます、と聞いたことがあります。実際は、どうなのでしょう?
(埼玉県・竹川さん・21歳)
羊をさばく模様を紹介しましょう。
先ず、羊を仰向けにして、ナイフを腹にさし、スーと十センチほど縦に引きます。そこから、右手のこぶしを差し入れ、心臓近くの動脈を爪で切ります。羊は、ピクッと痙攣し、そのまま静かになった。
それが、最初の写真です。
次に、皮を剥ぎます。最初に切り裂いた切り口から、顎までナイフを入れます。
さらには、下に股まで。スーッ、と。それから、毛皮と皮下脂肪の間に手を入れながら皮を剥いでゆくのです。
二番目の写真が、そうです。
次には、皮の上で中身を取り分けてゆきます。内蔵。肉。それぞれの部位ごとに、たらいに取り分けられてゆきます。この間、血は一滴も外には流れていません。腹にたまった血も杓で掬い取られ、それようのたらいに分けられます。
最後に皮だけが、一枚残ります。
三番目の写真です。
この間、三十分足らず。用いられた道具は、本当にナイフ一つでした。見事と言う他はありません。
羊飼いは歯を磨きますか?
(福岡県・高尾邦彦さん・54歳)
そりゃ、羊飼いだって歯ぐらい磨くでしょう。
信用できない? 証拠をお見せしましょう。今年の夏、たまたま撮った写真です。少年が、朝、パオの前でうがいをしています。左手に持っているのだ歯ブラシです。
でも、高尾さん、何でしょう? 羊飼いが歯を磨くのは、何か不思議でしょうか? それとも、歯ブラシ製造に携わるお仕事で、新しい市場を羊飼いの世界に求めようとしているとか。
<電気はある?>(1997.8.03)
パオに電灯はありますか。それとも、ランプか何かですか。
(大阪府・森一さん・48歳)
風力発電をしています。どの家でも、パオの後ろに風力発電用の、羽根をつけた竿が立てられています。パオのなかには電球がぶら下げられています。ただ、勿論、電力は弱く、本を読むにも苦労します。
外に出て星を見るか、早く寝るか。どっちかしかありません。
<犬が人の糞を食う?>(1997.7.31)
モンゴルでは犬が人の糞を食うと聞きましたが本当でしょうか?
(東京都・島崎滋さん・32歳)
本当です。どのパオでも二、三頭の犬を飼っています。放牧の手伝いは一切しません。そのようには訓練されていません。ただ、見知らぬ人がパオに近付くと、猛烈に吠えます。
また、パオにはトイレはありません。外で自由にします。その割りに人の糞を見掛けません。それは、犬が食うからです。もっとも、亜細亜大学の鯉渕教授によると、日本人の糞が食われるようになるには、一ヶ月近く滞在しなければならないそうです。
人の糞にも美味い不味いがある。そういうことでしょう。犬にも美食家がいて、ビールをたっぷり飲み、よくマッサージを受けた、十八、九歳のおかまの糞に限るな。そんなことを言っているかも知れません。
<羊飼いの定年・羊飼いは新聞を読むか>(1996.8.11)
羊飼いに定年はありますか?
また、肩たたきなどという「制度」はあるでしょうか?
(東京都・匿名希望・58歳)
当コーナーの誕生を広く世界にしるす記念すべき最初のご質問です。有り難うございます。ただ、それにしては、サラリーマンの方なのでしょう。定年を間近にした心の揺らぎをそこはかとなく感じさせる、哀愁を含んだ質問からの船出になりました。
お答えしましょう。羊飼いさんに定年はありません。八十歳でも九十歳でも構いません。ただし、羊よりも速く歩けないようだと、何のために羊を追っているのか分かりませんので、その時点で退職となります。
「肩たたき」については、孫がおじいさんの肩をたたいている姿は見かけます。今の今までは、てっきり、「おじいさんご苦労様」という愛情の印かと思っていましたが、確かに言われてみれば、「もう、オレに羊を譲って引退しろ」という合図であるのかも知れません。もう少し研究をしてから、改めて、お答えします。
羊飼いは新聞を読みますか?
内蒙古の草原には新聞配達はいますか?
(埼玉県・新聞販売業・市川辰雄さん・42歳)
新聞配達は内蒙古の草原にはいません。考えてみて下さい。隣のパオが見えないくらい離れているのです。車で飛ばしても、三十分はかかるなどというのはザラです。馬か何かで新聞を配達しようにも、午前中いっぱいかかって五軒しか配れない、なんてことになります。
で、ご質問の、読むかどうか。「三日から一週間遅れのものを、たまに読む」。これが、正解に近い答えではでないでしょうか。従って、羊飼いには新聞のテレビ・ラジオ欄と天気予報欄は、役に立たないことになっています。
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