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<CD・VCDの売られ方>

 楡の木陰に人の輪ができている。「最近街が汚れているから皆で街の清掃のボランティア活動を始めよう」、という相談をしている? そんなことは、絶対にない。
 海賊版のVCD だ。  

 売られ方はいろいろだ。人通りの多いところ、例えば地下鉄の入口で、ぎっしりVCD を詰め込んだ小さな段ボールを足下に置いて商売をしている者もいる。あるいは、オフィス街の昼時を狙って、毎日同じ場所で、例えばどこかの木陰に店をひろげる者もある。
 どちらにしても、多くの場合、ひとりだけでポツンとやっていると言うより、周りに何人かの同業者がいる。これは、猿が群れるのと似ていて、多くの目、多くの耳を持っている方が、敵の来襲をいち早く察知できるからだろう。「海賊」の天敵は公安だ。公安が来る。この時の逃げ足の凄まじさは嵐のようだ。比喩にいう。「蜘蛛の子を散らすように」、と。あいにく、蜘蛛の子が逃げるのは見たことはないが、海賊版売りの逃げ足の早さは見事だ。突然強風が吹く。木の葉がザワザワと揺れる。揺れた瞬間に、葉は一度に散り尽くしていた。そんな感じだ。誰かが何か叫んだと思うと、道路に広げたVCD をサッとかき集め、夢中で選んでいる客の手からも、ものも言わず、スッとひったくると、次の瞬間には、もうバラバラな方向に駆け出している。そのための備えとして、彼らは「店」を広げるにしても、パッと一瞬にたためる範囲までしか広げない。
 無論公安はパトロールをしているだけでいつまでも同じ場所にいるわけではない。それに、公安がパトロールをしているのは、一般には、海賊版の取締りに対してではなく、無許可販売全般に対してだ。この無許可の路上の物売りというのは、勿論海賊版のVCD もそのうちのひとつなんだが、実に数限りなくあるもので、桃・ウリなどの果物からオモチャ、靴、衣料、犬・ネコのペット、ソファー・ベッドなどの家具まで道端で売っている。公安が来ると、これらがみな一斉に逃げ出す。壮観といえば壮観なのだが、違法もこれだけの数があれば、公安にしても手の付けようがあるまい。発表に依れば、昨年、北京市が押収した違法のCD・VCD は三十万枚という。「我々も頑張っている」という意味の数字だろう。ただし、北京で売買されていると想定される海賊版の枚数は三千万枚という。ちょこっと桁が違う。ともかくも、パトロールの公安もじきにいなくなり、するとまた、どこからか集まってきて、何事もなかったかのように、商売が再開されることになる。


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