旅チャイナ(トップ)ホテル大全レストラン大全ぬいぐるみ屋観光バス情報
楼蘭倶楽部「中国ニセモノ考」のトップ


<早くも新札のニセ札>

 十月十五日の『北京青年報』にこんな記事が載った。「台湾新竹で新版の人民元の偽札発見」、と。三十五包み、合計で三百六十余万元(日本円で約五千四百万円)の新しい百元札のニセ札が台湾で拾われ警察に届けられたという。発見された時の状況は、時は十四日の午前八時、ちょうど退潮の時刻に海岸を散歩していた楊さん一家が水門の脇で黒い防水のビニール袋を見付けた。その袋を開けてみると……なのだそうだ。
 こうも書いてある。
「透かし」であるとか「金属線」であるとか、新しい百元札がニセ札防止のために施された特徴をすべて備えている、と。

 ニセ札に関する記事というのは、必ずしも珍しくはない。むしろ日本人からすれば驚くほどに多い。それでも、今回の記事は、少なくとも私にとっては、衝撃的であった。それは、この二週間、今度の新札にいかに高度の技術が織り込まれていてニセ札が出来にくく作られているか、また、そのために造幣局の技術員がどれほどの苦労を重ねてきたか、という新聞などの記事を繰り返し読まされてきたからだ。曰く、「贋造を防ぐための『十大巧能』が施してある」、と。曰く、一代前の新札の発行から九年、殆ど奇跡的な進歩がこの札には織り込めれている、と。
 それにもかかわらず、記事からみるにかなり精巧なニセ札が大量に発見される。しかも、これほど早く。
 そう、実際、たいした早さである。誰がどこでどうやって作ったのだろう。相当強力な協力者がいたということだろうか。新札の発行は十月一日。このニセ札の発見は十月十四日。北京に暮らしている私が初めて新札に触れたのは十月十八日だ。つまり、北京市民の多くがまだホンモノを見る前に、台湾の警察は三万枚をこえるニセモノの束を調査していたことになる。変な話だ。そういう衝撃である。

 中国の友人たちに新聞を見せて言ってみる。
「凄いね」
 しかし、彼らの反応は、むしろ、一様に覚めたものだ。
「新しい札が出来れば、新しいニセ札が出るのは当たり前ですよ」
 出なければその方がよっぽど不思議? そうかな?
「しかし、新しいお札には数々のニセ札を防ぐための技術が投入されていると言うじゃない」
「儲けが違いますからね。一方は公務員の安月給だし。一方は刷っただけ儲けだから……」  それなら、中国人民銀行の職員も最初からホンモノなど作らずにニセモノを作った方がよい? そうかな?
「それにしても早いのが凄いじゃない」
「そこがニセ札造りの腕の見せ所ですから」
 何だか自分の自慢をしているみたいだ。
 よく分からない。よく分からないが、銀行も大変、ニセ札造り大変、両方負けずに頑張れ、ということか。そして、どちらかというと、ニセ札造りによりシンパシイを感じている。そういうことなのだろうか。



「中国ニセモノ考」の目次に戻ります

「旅は舞台 演じるのは」のトップ・メニューに戻ります