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<偽書という冗談>

 偽書というものがある。偽作した書物のことだ。これをニセモノと言えるのかどうか? ホンモノかニセモノかと言えば、勿論、ニセモノである。偽書というくらいであるから。ただ、今まで述べてきた海賊版のCDやニセ札とは大分趣を異にする。海賊版のCDやニセ札は、ホンモノをコピーしたものだ。偽書というのは、実際にはない書物を造り出すということ、あるいは、実際にある書物に何かを書き加えてしまうということ。その意味では、創作である。ただ、自分の名前を使わずに他人の名前で書く。
 丁度、盗作の逆になる。盗作は、他人の創作を自分の名前で発表する。偽作は、自分の創作を他人の名前で発表する。どちらの罪がより重いか? それは措いておくとしても、後の世に与える影響という点では、偽作の方がはるかに大きい。例えば、誰かが李白の詩を集め『李太白集』を編んだとする。そして、その中にそっと自分の詩を入れておく。千数百年後にどこかの日本人がそれを読み、「なるほど詩仙の作は違う」、などと言って感激をし、その感激を教壇で多くの学生に語ったりする。今度はそれを聞いた学生が卒業論文のテーマにしたりして……、と。

 盗作というルール違反には、どこか、陰湿さが伴うとすれば、偽作というルール違反には冗談が伴う、と言ったらよいだろうか?


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