* 北京胡同物語・胡同の夏 *


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<なぜ、道で寝るの?>

 この季節、昼過ぎ、外へ出る度に日本では見かけぬ光景に出くわすことになる。それは、道端の槐の木ので人がいっぱい寝ていること。工事現場で働いている労務者も。露天で野菜を売っている人も。三輪車引きも。男はみな上半身裸で寝ている。……。さすがに、ネクタイを締めたサラリーマンは見かけないが。
「北京では、なぜ、こんなに多くの人が外で昼寝をするのだろう?」

 勿論、答えは簡単だ。余りに暑いから。
 連日三十五度を超える日が続く。日差しも強烈で、外を歩いていると、吐き気がするほどだ。北京の夏は、本当に、暑い。
 でも、実のところ、これは、答えの半分でしかない。
 残りの半分はこうだ!
 木陰が余りに心地よいから。
 暑いは暑い。ただ、日本のように湿度は高くない。木陰に入ると涼しい。しかも、木陰の下では、大抵、風が吹いている。汗が、すっーと引いて行くのが分かる。何とも気持ちいい。ひとたび木陰に入ったら、もう出たくない。腰掛ける。風が吹く。葉がすれる音がする。見上げると、槐の木。マメ科特有の丸が繋がったような葉を通し木漏れ日が揺れている。それさえ、ここでは、涼しげだ。風に吹かれ、木漏れ日に揺れているうちに、いつの間にか、眠ってしまう。本当に心地よい。こんなところか。

 いや、未だ、足りないかも知れない。
 なぜ、北京では人が道で昼寝をするのか?
 外が暑いからとか、木陰が涼しいからとか……ではなく。
 無理して仕事をする、という考えがないから。
「この暑いのに、なぜネクタイ締めて、革靴はいて、背広まで着て何やってんだ」
「なぜ寝るって? なぜ、起きてるんだ? こっちが聞きたいよ」
 彼らは彼らで、こんなふうに、我々を見ているのかも知れない。


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