* 北京胡同物語・胡同の夏 *


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<蝉がいなくなって……>

 所用があり北京を三、四日留守にした。帰ってきて驚いた。朝夕の風が全然違っている。涼しいし。いや、涼しいばかりではない。音がする。葉を揺する音がする。今までも音はしていたのだろうか? 気が付かなかっただけなのだろうか? そうかも知れない。それにしても、音に気が付くのは、やはり秋なのだろう。見上げれば、槐の葉を透いて見える空は青く高い。

 道端で寝ころんでいる人の数もめっきりと少なくなった。みんなちゃんと歩いている。人が歩く。嗚呼秋だ。

 そう言えば蝉が鳴いていない。出掛ける前、ほんの三、四日前まであんなにやかましく鳴いていたというのに。
「いつの間にいなくなっちゃったんだろうね」
 馬慶明さんがこともなく答える。
「23日が処暑でしたから」
 処暑なんか知らない。処女というなら聞いたことがあるけど……。
 二四節気のひとつ。暑気の季節の終わりだそうだ。立秋から半月たって処暑がくる。変な気もするし正しい気もする。
「北京の蝉は大暑から処暑までって昔から決まっていますから」
「昔からね……」
 残念ながら今年は蝉の終わりには立ち会わなかった。そう言えば、北京の言葉で蝉のことを「季鳥」というのだそうだ。季節の鳥。大暑から処暑まで。蝉がいなくなって、入れ替わりに秋が来た。そういうことか。


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