朝、外に出て驚いた。 「ああ、秋だ」 風が強く、冷たい。 ここ何日か、秋の兆候は感じていた。空が日を追って高くなる。朝夕の涼しさが増す。昨日、天安門広場のまえを車で通ったときも、「アッ」と思った。 「馬さん、見てよ、あの国旗」 「どうかしました。やっぱり、中国の国旗は赤いですね」 「色ではなく……」 「形は大抵四角ですよ。国旗というのは……」 「いや、旗の向き」 「ああ、秋ですねぇ」 前の日まで、北に向かってはためいていた掲揚台の国旗が南向きにはためいている。秋が、静かに忍び寄って来ているのだ……。
それでも、驚いたのは今日が初めてだ。 「本当に秋が来たんだ」 秋も、ある朝、突然に来るものらしい。
風吹いて、秋。