* 北京胡同物語・北京秋天 *


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<秋の果物>

 夏には夏の果物があったように、秋には秋の果物がある。
 ブドウ、リンゴ、梨。少し遅れて、柿。それらを荷台に積んだ三輪車が、街角にも胡同にも溢れる。街中に果物売りの声が響く。

 果物とは言えないかも知れないが、九月の中頃には焼き芋屋も現れる。日本では見慣れないものもある。ドングリを少し大きくした形で、色も茶色。荷台に山積みにして売っている。聞くと、ナツメだという。十元(日本円で約百八十円)も買うと、掌いっぱいになる。
 食べてみると、なかなか微妙な味わいがある。甘いのだが、果物の甘さとは少し違う。何と言うのか……、如何にも「黄土の大地で実りました」、という味がする。素朴というのか、土の香りがするというのか。
 食べているうちに、『三国志』の関羽を思いだした。関羽の顔は赤い。ナツメのようだと、確か、表現されていたはずだ。関羽の故郷は山西省。ナツメの産地だ。北京のナツメはドングリの大きさだが、山西省のナツメはピンポン玉ほどもある。乾燥させたものを食べるたことがある。やはり、素朴で大地の甘みの味がした。色は本当に赤くなる。関羽の顔はナツメのようだというのは、この乾燥させた方を言うのだろう。「どちらにしても……」、ナツメを食べながら思った、「うまい比喩だ」、と。聞く人々を驚かす。色で驚かしながら、同時に、舌が覚えている味わいから親しみを印象づける。しかも、山西省の黄色い大地がどことなく連想される。


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