* 北京胡同物語・冬は厳しく…… *


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<初雪>

 そう言えば、寝ながら「シンシン」という音を聞いたような気がする。夢のなかで、「エライ寒い朝だな、どうしちゃったんだ?」と思っていたような気がする。
 起きると雪だった。
 十一月の初雪というのは北京では珍しい部類に入る。そもそも一年間に雪が降るのは、三、四回のことでもあるし。外に出ると、見慣れたはずの街の姿がすっかり変わっている。知らない街を歩いているみたいだ。

 街を歩いていてひとつ発見があった。
 道行く人が傘をさしていないこと。帽子をかぶっている人は帽子のてっぺんを真っ白にして歩いている。帽子をかぶっていない人は頭に雪を載せて歩いている。風に向かって自転車を漕いでいる人は眉毛を白くして走ってくる。風に背を向けて自転車に乗っている人は背中に雪を背負って走って行く。私は、勿論、傘をさしている。日本人だから。それにしても、本当に、傘をさしているのは私ひとりだ。

 馬慶明さんに聞いてみる。
「なぜ、中国人は雪の日に傘をささないの?」
「なぜ、日本人は雪の日に傘をさすのですか?」
「濡れるじゃない。雨と同じじゃない」
「払えば落ちるじゃないですか。雨とは違うじゃないですか」
 雪の質が違う、というのがひとつあるかも知れない。北京の雪はサラサラと乾いている。
「要は、雪に当たるのが嫌じゃないんだ、中国人は」
「なるほど。雪に当たるのが楽しくはないんですね。日本人は」

 勿論これは言葉の掛け合いだ。北京の雪も冷たい。強い風に煽られた雪片が顔に当たると痛い。そんなものを頭からかぶって喜んでいるわけじゃない。それにしても、彼等は傘をささず雪を身体で受けとめる。冷たいなりに、痛いなりに、突然天から降ってくる白く冷たい粒々を楽しんでいるのかも知れない。


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