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* 北京・街角の歌ごえ *


<ニセ物は文化?……>

 楡の木の木陰。五、六人の人が円陣でも組むようにしゃがみ込んでいる。通りがかりの人も立ち止まってのぞき込む。何だろう?

『タイタニック』は、今年、中国でも話題になった。
 ただ、この国で面白いのは、映画館での公開前にこの映画を見た人が沢山いること。
「和田さん、面白いですね。『タイタニック』」
「エッ、まだ北京ではやってないじゃないの……」
「VCD ですよ」
 なるほど。勿論、海賊版だ。中国ではVCD は、どういうわけか、日本よりずっと普及している。映画館での上映は、それから二ヶ月の後のことだった。
 街で売られている海賊版のVCD は大抵10元から15元(一元は約16円)。映画館の入場料は封切りで60元だから確かに格安だ。買わない方が損?
 先日、こんな記事を読んだ。ビデオカメラを持って映画館へ入場するのを禁止することになった、と。確か、広州でのことだ。ひどい話だ、海賊版のビデオを造るために、ビデオカメラを劇場に持ち込む。DCV を買ったら前の席の人の頭が映っていたりして……。
 地下鉄の入口、昼食時のオフィス街、繁華な商店街。北京では、およそ街角という街角、人が通るところには海賊版のVCD 売りがいると思って間違いない。

 CDやVCD に限らない。こちらの新聞には、毎日のようにニセ物に関する記事が満載だ。「王朝ワインのニセ物づくりを摘発」「携帯電話の電池、偽物多数」「ニセ外国煙草」「偽パスポート」、なかには「偽逮捕状」なんていうのもある。
「二鍋頭」という白酒がある。北京では非常に人気がある。安くて美味い、と。この酒のニセ物が街に溢れているという。ナポレオンじゃあるまいし、一本十元もしない酒のニセ物を造ってどうするんだ、と思うが、とにかく本当らしい。先日も、中国の友人たちと酒を飲んでいたら、ひとりがこう言う。
「和田さん、この『二鍋頭』はニセ物だよ」
「どうして分かる? 美味いじゃない」
「だからですよ。本物の『二鍋頭』は、こんなには美味くないよ」
 もうひとりも言う。
「私もそう思うね。こんな美味い『二鍋頭』は初めて飲んだ。次もこのニセ物に限るね……」
 どうなってるんだ。

 偽ありて後、本あり。人生は虚実皮膜の間にあり。本物だけの世の中だって。そんなことあり得る? 第一、そんなの面白い? 知的所有権の保護に関する米国の怒りは激しい。しかも、その怒りは正当である。しかし、中国の民衆のレベルでは、ニセ物というのは、一種の人生観の問題なのかも知れない。そう、所詮世の中は殆どがニセ物なのよ、と。


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