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* 北京・街角の歌ごえ *<普請中>
雪の日の工事現場。到着した車をめがけて何十人、何百人というヘルメットの男たちが先を争って集まってくる。みな手にはアルミの食器を持っている。昼食の配給だ。
「普請中」。明治の終わり、森鴎外が、当時の日本の状況を喩えて言った言葉だ。北京の街を歩いていて思う。ああ普請中だ、と。森鴎外がこの語を使ったのは比喩であった。「過渡期」、「未完成」、という意味で。今の北京の「普請中」は比喩ではない。文字通りの「普請中」だ。道路は掘り返され、古い家並みは取り壊され、新しい高層ビルを建て上げて行く巨大なクレーンが林立している。北京には、今、何十何百という建設現場がある。そこに身を置いていると、この「普請中」は「完成」に至る「過渡期」としての「普請中」ではないような気がしてくる。「完成」なんか求めていない。永遠の「普請中」。壊すエネルギー、造る情熱。そういったものの発露としての「普請中」。 街がもつエネルギーが人々を引き寄せ、そのひとりひとりの放つエネルギーによって街は更に生き生きとした「普請中」ならではの光彩を放つ。そういうことだろうか。 |
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