街角の歌声メニュー 旅チャイナ・トップ 中国旅行大全・北京編 ホテル大全
レストラン大全 『雑踏に酔う』・試聴 三輪車胡同巡り 格安航空券

* 北京・街角の歌ごえ *


<普請中>

 雪の日の工事現場。到着した車をめがけて何十人、何百人というヘルメットの男たちが先を争って集まってくる。みな手にはアルミの食器を持っている。昼食の配給だ。
 食器にはスープが注がれ、もう一方の手で大きなマントウを受け取る。思い思いの場所に陣取る。夢中になって食べる。一心不乱。雪がスープに入る。冷たい風が顔を打つ。それでも、雪も風も食べることの楽しさに較べれば何でもない。
 彼らも、また、地方からの出稼ぎである。河北省や四川省の人が多いという。みな夜行列車に揺られて、コトコトコトコト、やってきたのだ。北京という巨大な工事現場へ。そこで、ヘルメットをかぶり雪に打たれマントウに食らいつく。
 彼らひとりひとりの身体から立ちのぼる生のエネルギーの凄まじさをどう表現したらよいのだろう。

「普請中」。明治の終わり、森鴎外が、当時の日本の状況を喩えて言った言葉だ。北京の街を歩いていて思う。ああ普請中だ、と。森鴎外がこの語を使ったのは比喩であった。「過渡期」、「未完成」、という意味で。今の北京の「普請中」は比喩ではない。文字通りの「普請中」だ。道路は掘り返され、古い家並みは取り壊され、新しい高層ビルを建て上げて行く巨大なクレーンが林立している。北京には、今、何十何百という建設現場がある。そこに身を置いていると、この「普請中」は「完成」に至る「過渡期」としての「普請中」ではないような気がしてくる。「完成」なんか求めていない。永遠の「普請中」。壊すエネルギー、造る情熱。そういったものの発露としての「普請中」。
 この、街中に横溢する破壊と建設のエネルギーの凄まじさを何と表現したらよいのだろう。

 街がもつエネルギーが人々を引き寄せ、そのひとりひとりの放つエネルギーによって街は更に生き生きとした「普請中」ならではの光彩を放つ。そういうことだろうか。


街角の歌声メニュー 旅チャイナ・トップ 中国旅行大全・北京編 ホテル大全
レストラン大全 中国で本を出版 三輪車胡同巡り 格安航空券