確かに、市場というものは、その土地の何かを象徴している。
　象徴しているのは、人々の暮らしなのだろうか。日常生活への情熱なのだろうか。生きている証の躍動感なのだろうか。

　ダイナミズム、と言ったらよいだろうか。
　北京の街には数限りない自由市場がある。どの市場でも同じだ。そこに足を一歩踏み入れると、そのダイナミズムに圧倒される。
　肉屋がある。牛とか豚とか羊とかが、皮を剥かれ、一頭そのまま吊してある。その光景自体が、パックされた肉しか知らない私たちには異常だ。人々は、自分の欲しい部位から欲しいだけの分量を切り取って貰って、買う。
　そうやって、人々は肉を売り、肉を買う。何というダイナミックな売り方。何というダイナミックな買い方。

　吊された一頭の牛から肉を買う中国人と、スーパーマーケットでチマチマと包装された肉を買う日本人。勿論、生活のほんの一齣でしかない。ほんの一齣でしかないが、この違いは、両者の生き様の違いを、確実に、象徴している。