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* 北京・街角の歌ごえ *


<小鳥を飼う(3)>

 官園の周りの路上の雑踏で売り買いされているのは小鳥ばかりではない。なかにはカラスを売っている人もいる。カラスを買ってどうするのだろう? 鷹も売っている。皮の分厚い手袋に止まらせて、「ほら見ろ」とばかり誇らしげに腕を高く掲げる。鷹の方もよくしたもので、そうされるとこちらも、「ほら、見ろ」と羽根を拡げてみせる。「刃渡り」と言う言い方はあるが、「羽渡り」という言葉はあるのだろうか。あるとすれば、羽渡り一メートルはあろうというものだ。それにしても、売り手と鷹で息を合わせ、「ほら見ろ」って言ったって、こんなもの売れないだろうに。みんな狭い家に住んでいるのだから。
 いや、鳥ばかりではない。犬、ネコ、ハムスター……。誰もが思い思いに持ってきて、好きに売っている。そんな感じだ。買う方も思い思いにやってきて、好きに買って行く。

 日本では見かけない「ペット」も売られている。キリギリス。道端で男たちが輪になっている。覗くと、真ん中で腰掛けた男が幾つもある紙の筒の中からキリギリスを出して台に乗せる。周りの大の大人が、一匹ずつなめるように選んでいる。どうなってるんだろう?
 隣にはもうひとつ輪があり、そこでは、キリギリスを入れるためのヒョウタンが売られている。格好の良いヒョウタンに細微な模様が描かれている。それを、ああでもないこうでもないと、これまた、大の大人が一生懸命に選んでいる。
 キリギリスをヒョウタンに入れ、そのヒョウタンを懐にいれて暖めてやる。そうやってキリギリスに冬を越させてやるのだそうだ。
 とにかく、すこしおかしい。
 イソップにこのありさまを見せられないのが残念だ。そうすれば、「アリとキリギリス」の中身も変わっていただろうに。


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