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* 北京・街角の歌ごえ *


<カボチャの種>

 どう考えても無駄だな。
 いつもこう思うのは、カボチャの種。彼らは、実に、よく食べている。テレビを見ながら、新聞を読みながら、話をしながら、トランプをしながら、駅で列車を待ちながら……。
 種を割って、そのなかにある小さな種肉を食べる。
 見ていると、本当に器用に食べる。種を縦にして前歯に挟む。微妙に力を加減し、パチッと割る。そのまま手を使わず、舌を使って種肉を引き出す。芸術的でさえある。  

 何が無駄って、食べても食べても少しも腹の足しにならない。なるわけないんだ。ほんの5,6ミリの、紙のように薄い。吹けば飛んでいっちゃう。そんなものをいくら食べても、食べるために使うエネルギーのほうが、食べるために得るカロリーより多いんじゃないの? 食べれば食べるほどお腹が空く? 霞を食っているようなものだ。誰が食べ始めたか知らないが、よくもこんなものを食べようと思い付いたものだ。
 しかも、それに使われる時間。食べ始めたら止まらない。一斤(500グラム)買うと両の掌に三杯分くらいくる。値段は5元(一元は約15円)。百個や二百個ではない。彼らはそれを食べ尽くすまで食べ続ける。よく思う。十三億人。このために使われている時間は何と膨大なのだ、と。
 余計なお世話? そう、そうでしょうとも。  

 と、いうわけで、街角のいたるところでカボチャの種を売っている。カボチャだけではない。スイカの種、ひまわり、落花生。一言にカボチャの種と言っても幾種類もある。塩味。しょうゆ味。味なし、と。霞も、味は多彩というわけだ。
 それにしても、無駄だ。


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