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* 北京・街角の歌ごえ *


<天壇公園(3)>

 何十とある人垣のなかでもひときわ大きなものがある。そこからは、京劇独特の節回しの歌声が聞こえてくる。女性の声だ。胡弓、琵琶、太鼓などの伴奏に乗って、頭のてっぺんから出てくるような歌声。京劇の稽古をしているのだろう。幾重にもできた輪のなかを覗き込むと、輪の真ん中に、楽器の演奏者たちと向かい合う格好で女性がひとり立っている。びっしりとした人垣のなかで、彼女の周りにだけに空いた空間ができている。その空間で彼女は歌う。自分の歌に合わして右手を振る。時には目をつぶり、時には左右に顔を動かす。
 スポットライトはない。スポットライトはないが、そこだけに円い光が当たっていてもおかしくはない。彼女の空間は、完全に、彼女の舞台だ。先に、「京劇の稽古」と書いた。しかし、これは「稽古」ではなく、「公演」なのだろう。幾重もの人垣に囲まれた晴れ舞台。
 一節、歌い終わると、拍手が起きる。彼女は、誰にともなく、会釈の仕草をする。

 何のために歌うのか。何のために、天壇公園で歌うのか。それは明らかに、人に聞かせるためだろう。
 天壇公園というのはそういう場なのだ。そういう舞台なのだ。


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