前にこう書いたことがある。市場は社会の縮図だ、と。同じ意味でこういうこともできそうだ。駅は社会の縮図である、と。 特にいまの北京はそうだ。「普請中」である中国のなかの最も激しい「普請中」の街が北京である。遠くの町から多くの人々がやってくる。遠く町へ多くの人々が出て行く。みな、大き荷物を背負っている。やってくる人も、出て行く人も。 駅に降り立つ人はどちらかふたつにひとつ。北京に出てきた人か、北京に帰ってきた人か。駅を出て行く人もふたつにひとつ。どこかへ帰って行く人か、どこかへ出掛けて行く人か。これに、得意と失意を掛け合わせると幾種類になるのだろう……。 とにかく、多くの余りに多くの、互いに見知らぬ人々がすれ違う。それが駅……。