鉄製の手すりに足をこすりつけるのもひとつの健康法。これも、ひとつの健康法、ということなのかも知れないが醸し出している雰囲気はまるで違う。
　同じく大学でラグビーをやっていても、一方はワイワイ仲良し同好会、一方はビシビシ厳しいラグビー部、という感じか。

　三、四十人いるだろうか。皆で唱和しながら自分で自分の身体をたたいている。歌というよりは経を唱えているような。メロディックではない。リズムカルでもない。低く地を這うような、念仏を唱えているような……。皆で声を合わせながら、左手の掌で自分の右手をたたく。何回かたたくと、今度は、右手の掌で左手をたたく。全員の動作がピッタリ合っている。次は両の掌で膝の辺りを。今度も、誰一人、動きにズレはない。次は肩……。
　何かの健康法なのだろう。それにしても、低い声の唱和、全員のピッタリ一致した動き……。何かの健康法なのだろうが、何とも怪しげな雰囲気が、そこには、立ちこめている。少なくとも溌剌とはしていない。健康法というより、むしろ、怨念の発散。三途の川原でやっている朝のラジオ体操といったところか。