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* 北京・街角の歌ごえ *


<孫>

 北京という街は、子供は少ない。でも、孫は多い。

 この街では、なぜか、子供の姿を余り見かけない。日本では子供たちが公園でサッカーや野球をしている。裏通りでは、男の子はビー玉をし、女の子はゴム飛びをする。それとも、今は日本でも違うのだろうか? それにしても、仲間になってワイワイガヤガヤピーチクパーチク遊んでいるだろう。北京では子供達のそういう姿を見ることは少ない。
 馬慶明さんに聞いてみる。
 「なぜだろう?」
「一人っ子ですからね」
「なぜ一人っ子だと遊ばないの?」
「遊べないんですよ……」
 彼の答えはこうだ。一人っ子は家庭のなかで極端に大切にされる。「小皇帝」という言葉が使われる。勿論、新語だ。どんなわがままでも通る。自分の一挙手一投足が注目されている。そうやって育てられてきた子供は、よその子供とは遊べない。よその子供も「小皇帝」だからだ。昔から二人の皇帝は並び立たないことになっている。「……だから外で遊ぶ子供を見かけないんですよ」。
 なるほど。

 あるとき、別な中国の友人にも尋ねてみた。
「なぜだろう?」
「一人っ子ですからね」
「なぜ一人っ子だと遊ばないの?」
「遊べないんですよ……」
 彼女の答えはこうだ。親は何としてもこの一人っ子を良い大学へ入れたい。中国は大学の数が少ない。入るだけでも大変だ。まして、北京大学などの一流校に入れるのは……。良い大学に入れるのは良い高校。良い高校に入れるには良い中学。良い中学に入れるんは良い小学校。と、いうわけで、小学生の越境入学が、北京では、大変に多いという。越境入学ったってタダじゃできない。コネがいる。コネを探し回って目指す小学校の校長を訪ねる。コネがあってもコネだけじゃ入れてくれない。カネがいる。学校に寄付をしなければならない。5万元が相場という。一般労働者の平均月給が千元というから大変な額だ。こうして、やっとの思いで入れたんだ。外でビー玉なんかさせていられない。「……だから外で遊ぶ子供を見かけないんですよ」。
 なるほど。

 それでも、お爺ちゃんお婆ちゃんと連れだって歩いている子供はよく見掛ける。お爺ちゃんと遊んでいる分には「小皇帝」でいられる。お爺ちゃんと遊ぶなら母親にも「勉強しろ」と文句を言われない。そういうことだろうか? どちらにしても、たいていの場合、お爺ちゃんのほうが孫よりもずっと嬉しそうにしているのだが。

 というわけで、北京には子供はいないが孫はいっぱいいる。


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