これは木陰ではない。木陰ではないが、陰さえあれば、中国人は座り込む。座り込んだまま、三十分でも一時間でも動かない。
　確かに夏の日差しは強烈に強い。それにしても、日陰があればとにかく、座り込む。木陰だろうが、何の陰だろうが。
　先日も北京駅の前を歩いていたら、公安の車が止めてあった。見ると、車輪の間から足が二本出ている。ギョッとしてよく見ると、車の下で人が寝ている。日陰があるなら車の下でも構わない。
　天安門広場に行った。夏の日が猛烈に照らす広場に、どういうわけか、人々が一列になって座り込んでいる。なんだろう？　近づいてわけが分かった。そこには一本の夜間の照明用の電柱が立てられていて、それが、長さ七、八メートル幅五十センチの陰を作っている。その五十センチの陰に沿って座り込んでいるのだ。

　とにかく、面白いですよ。陰に座り込んでいる人々を見ているだけでも。この国は。