列車がフォームに入ってくる。人々が降りてくる。誰もが、少し緊張気味だ。誰もが、荷物をいっぱい抱えている。ここまでは誰も一緒だ。ここからがふたつに分かれる。誰かに出迎えて貰える人。誰にも出迎えて貰えない人。
　当たり前のことだ。当たり前のことだが、繰り返し繰り返し眺めたその光景は、私に、人生の孤独について想いを巡らさずにはおかなかった。

　出迎えられる者。汝は幸せ者なり。たとえ待つものが借金取りでも刑事でも……。
　出迎えられぬ者。汝は……。所詮人生は誰も待ってはくれていない。そういうものだ。人は虚に向かって無に向かって歩いているものだ。北京駅では子が出迎えてくれたかもしれぬ。しかし、三途の川では誰も待ってはいないだろう。

　とにかく、列車が着く、人が降りてくる。誰かが出迎えてくれ、これは良いことだ。まして、それが息子なら、その幸せを思いっ切り噛みしめたらよい。もしかしたら、人生で一番楽しい一瞬ではないだろうか。私も、端から、祝福したい気分になる。