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* 北京・街角の歌ごえ *


<夏の夕暮れ(3)>

 北京の夏の夕暮れ。
 暮れそうで、なかなか、暮れない。
 その暮れまどう街の胡同(横丁)を一台の荷車が通り過ぎて行く。漕いでいるのは母親。乗っているのは父親と三人の子供たち。二歳と八歳と十歳。それぞれ手にアイスキャンデーを持っている。
 つい先ほどまで、そこの角で野菜を売っていた。荷台に並べ。ナス、インゲン、トマト。夫婦で声を張り上げて。店をしまい、その荷台に子供たちと売れ残った野菜を乗せ、家路につく。

 今日の稼ぎはどうだったろう? 家までは一時間以上かかるという。どんな家? どんな暮らし?

 彼らの背中には、何とも言えぬ、安堵感がある。一日の仕事を終え我が家に帰る、そういう安堵感? 家族揃って帰って行く、そういう安堵感? 風景の中に溶け込んで生活をしている、そういう安堵感? ともかくも、その安堵感の上に夏の夕闇が次第次第に降りてくる。


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