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* 北京・街角の歌ごえ *<胡同(2)>
胡同は様々な物売りの声や音で溢れている。
勿論季節によらないものもある。豆腐売り穀物売り野菜売り、廃品の回収、鍋直し、刃物研ぎ。なかでも刃物研ぎは面白い。自転車に乗り、鉄片を繋げたものを振ってチャリンチャリンと音を立てながら路地を廻る。自転車には刃物を研ぐための道具が一式積んである。大抵は紺の帽子をかぶり、腰には同じく紺の前掛けを巻いている。まあ、制服みたいなものだ。昔は何でもそうだったのだろう。ひとつの生業には、ひとつの装束。それは哀しみでもあり誇りでもあっただろうか。ひとつ研いで二元(一元は約十四円)。彼らの手に掛かると、ボロボロの包丁も新品以上の切れ味になるという。北京中に何人ぐらいいるのだろう。紺の帽子に紺の前掛け。この、昔ながらの出で立ちの刃物研ぎが、毎日毎日、雨の日も風の日も胡同をチャリンチャリンの音を響かせながら廻っている。チャリンチャリンの音が響けば、あちこちの戸口から声が掛かる。包丁やハサミやナイフ。腕がいい。腕がいいから存在できる? 大量生産に大量消費。使い捨て。今までとは違う消費の姿がそこまで来ている。それでも、チャリンチャリンは生き残れるのか? それとも、現代的な巨大マンションが次第に胡同を押しつぶして行くように、彼らは程なく北京の街から消えて行くのだろうか? |
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