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* 北京・街角の歌ごえ *


<胡同(4)>

 胡同は道だ。人が通り、自転車が通り、三輪車が通る。ただし、道であるだけではない。人や自転車が通るだけではない。そこで、老人たちは鉢植えの花を育て、女たちは洗濯をし、男たちは将棋をする。夏には小さなテーブルを持ち出して一家で食事もする。生活の場であり、交際の場であり、議論の場であり、喧嘩の場でもある。
 子供たちもここで育つ。
 近所の人々の視線のなかで乳を飲み、よちよち歩きをはじめ、学校に通い、嫁いで行く。

 小学生の男の子が宿題をしている。通りがかりの大人が声を掛けても顔も上げない。一心不乱。それにしても、なぜ、外で勉強するの? 
「家の中は暗いから」
「それだけ?」
「ここの方が落ちつくし」
 そういうものなのだろう。この胡同で育ってきた。物売りの声がして、自転車のチリンチリンと走って、「偉いね」なんて誰かに声を掛けられて……。そういう方が集中できるのだろう。それに、そもそも、誰もいないところで勉強なんぞしても少しも面白くない。
 張愛玲という作家がいる。革命後社会主義体制とそりが合わず国外へ亡命をした。彼女がこう言っている。「中国人は大勢の人の間でオギャーと生まれ、大勢の人の間で死んでいく」、と。名言だと思う。実にうまく中国人を表現している。
 勉強も「大勢の人の間」でするものなのだ。
 こうやって、子供は中国人になってゆく。


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