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* 北京・街角の歌ごえ *


<老夫婦(2)>

 晩秋。強い西北の風が吹き始める。砂塵と枯れ葉をごっちゃにして巻き上げる。道行く人は、それを避けるために手で目の当たりを被い、うつむきながら歩く。そんな季節だ。

 珍しく、その風が、昼を過ぎても少しも吹かない。暖かい日差しが燦々と降り注ぐ。そんな昼下がり。公園の青空床屋で老婦が髪を切ってもらっている。床屋も老人だ。白い上っ張りを羽織り、黒いソフトをかぶり。髪を何度も水に浸した櫛で撫で、充分に湿らせてパチンパチンと切って行く。かなり大胆に切って行く。もう少し慎重にしたら……。老婦人は一向に気に掛けていない。
「オイオイ、切りすぎじゃないの?」
 一番気にしているのは、その床屋の後ろからズーと見ている老夫の方。
「どうでもいいのよ、もう歳なんだから……」
「ホラホラ、大丈夫かな……」
 にこやかな老婦の顔にも、床屋の黒いソフトにも、暖かい光が降り注ぐ。心配げな老夫のサングラスにも。本当に何の惜しげもなく降り注ぐ。


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