朝の通勤の光景といえば銀輪部隊と相場が決まっている。中国といえば自転車。自転車といえば中国。見慣れた光景のはずなのだが、それでも、最近、「あれッ」と思うことが多い。

　いまや長安街の両側には現代的な高層ビルが建ち並んでいる。その高層ビルに向かって自転車の群が流れてゆく。そういう時だ。「あれッ」と思うのは。
　自転車は自転車なりのスピードで進む。一群のかたまりになって。昔ながらのリズムがある。そのスピード・リズムは高層ビルが期待をしているスピード・リズムではない。そういう「あれッ」なのだろう。
　自転車の群には様々な人がいる。子供を後ろに乗せた男。野菜かなにかだろう。大きなズタ袋を運ぶ労務者。通学の小学生。その多様さは高層ビルが期待をしているものではない。そういう「あれッ」なのだろう。

　ともかくも、人びとは今日も自転車に乗り、群になり、自転車のリズムで、様々な姿で高層ビルに向かってペダルをこぐ。そういうアンバランスが、今の中国なのだ。