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<北京・八達嶺長城>

 もう冬だからだろう。いつもは観光客でごった返している長城の登り口も、その日は人もまばらだった。登り初めて四番目になるのだろうか、ひときわ高い楼台を、息を切らして、登り切る。次の瞬間、アッと息を飲む。何という雄大さだ。

 空気は清冽。風は寒烈。空はどこまでも青い。その空の下に重畳として峰峰が連なっている。右を向いても左を見ても、その峰峰の果てるところはない。その峰峰に沿ってうねるように煉瓦の壁が連なっている。三百メートルほどおきに楼台がポツンポツンとアクセントを付けている。峰峰が果てることのないように、長城も視力の限りうねり続けている。楼台もアクセントを刻み続けている。

 その楼台を過ぎるとだらだらとした上り下りが続くが、その辺りまでくると、まったくと言っていいほど人影はない。見えるのは山と長城と青空だけ。聞こえるのは風の音だけ。

 歩き疲れて煉瓦の階段に腰をおろす。身体の火照りを感じながら、大きな風景のなかでボーッとするのは何とも心地よい。

 六千キロの壁。自分が日本人であるからだろうか、この距離がどうもうまく想像できない。長さばかりではない。二千年。中国人は、戦国時代から明代まで二千年の長きにわたりこれを造り継いできた。凄いことだ。ある中国人は言う。守るためだけのものであること、それが誇りだ、と。別な中国人は言う。塀で囲って閉じこもる。中国の閉鎖性の表れである、と。日本人の私は、ただ唖然とするばかりだ。「どちらにしても、とにかく、よく造ったな」。驚くべき執念。エネルギーの横溢とでも言えばよいのか。外敵を防ぐに実践的な役割を果たしていないという説もあると聞く。本当だろうか。だとすれば、何というエネルギーの浪費。それにしても、よく造った。中国人にして初めて造り得たものであることだけは間違いなさそうだ。

 気が付くと、身体がすっかり冷えてしまっている。いつの間にやら、大きな西の空が赤く染まり始めている。

(中日新聞・東京新聞の2001年1月28日日曜版に掲載)  


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