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<山西省・五台山>

 五台山は中国仏教の聖地。地形は「釈迦の掌」と比喩される。五本の指は五つの嶺。それに囲まれた手のひらに寺院が点在する。

 実際に行ってみると、先ず、そのスケールに驚かされる。
 指といっても三千メートル級。掌といっても周囲は二百キロ。夏であれば山は緑と高原の可憐な花に覆われる。しかも、その周りは黄土高原、剥き出しの黄色い大地が果てしなく広がっているのである。

 釈迦の教えが伝わり八百年。唐の時代は中国仏教のひとつの頂点であった。ここ五台山にも三百を超える寺院が建立され、巡礼の群れが寺から寺へと経巡り、全山を荘厳さが包んでいた。

 その時代にここを訪れた日本僧がいる。円仁。悟りを深め確信を得たい。そんな情熱に突き動かされ多くの僧が海を渡った。その一人である。彼は『入唐求法巡礼行記』という興味深い記録を残しているのだが、初めて五台の山を遠望したときの感激をこう綴る。「地に伏して遙かに礼し、覚えず涙をふらす」。

 それから更に千二百年。今では、観光ホテルが建ち、巡礼に代わり観光客の群れが寺を廻るようになった。もちろん、驚くには値しまい。事実として、かの時代の仏教的情熱を人々はとうに失っているのだから。「俗化」を嘆くのも不遜というものだろう。自分自身が観光客の群れの一人なのだから。そんなことを考えていたら思わぬ光景に出くわした。寺寺を巡り、頭を地に摺り、読経をする一群の人々がいた。先頭の墨染めの衣は尼さんのようだ。涙を流しながら経を唱えている。

 曰く言い難い衝撃を受けた。眼前の尼さんと本の円仁が重なった。聞けば台湾からの巡礼だという。今時変だ。それにしても、五台山に巡礼は似合っていた。スケールに見合う情熱の発露がなければ空しい。そんなところか。

(中日新聞・東京新聞の2002年5月12日日曜版に掲載)


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