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<新疆ウィグル自治区・クチャ>

 水の流れがあるところには村落がある。村落があるところにはポプラの並木がある。この辺りのポプラは葉の裏が白い。風がそよぐと、葉の表がキラキラと光り、白い葉裏が涼しげに揺れる。その葉陰で人々が憩う。午後のひととき。ウィグルの民族衣装の女たちが水汲みにやってくる。昼寝から覚めた子供たちが水遊びに興ずる。葉が擦れる音がして、笑い声が聞こえる。灼熱の砂漠を旅してきた者には殆ど奇跡的な光景に見える。

 思いきり砂漠に浸ってみようとやってきた。中国最大の砂漠はタクラマカン砂漠。その北縁に沿って一本の細い細い道が続いている。シルクロードの天山南路である。東は西安に繋がり、西はローマに至る。走っても走っても砂礫の原が続く。生命の生存を許さぬ荒漠たる世界。そんな大砂漠にポツンポツンとオアシスがある。オアシスが近いことは、道の両脇にポプラの並木が見えてくることで知れる。ポプラがあることは水があること。水があることは人がいること。並木を抜け村落を抜けると、またもとの砂と風だけの死の風景のなかに入ってゆくことになる。

 クチャもそんなオアシスのひとつ。二千年前、中国の漢の時代には亀茲国として天山南路最大の勢力を誇っていたという。また、唐の時代には仏教が隆盛を極め、「伽藍は百余箇所、僧徒は五千余人」、とこの地を訪れた玄奘三蔵を驚嘆させたという。その後、幾多の民族の興亡が繰り返されてきた。何もかもが土塊に戻り、砂に埋まった。多くの隊商が行き交い、紫髯緑眼の胡人らが喧噪を極めた大オアシス国家の面影は今はない。

 それでも、ポプラの葉陰は、変わることなく、旅人に涼をもたらし、清い流れはオアシスの民の生を支えている。

 砂漠の旅はオアシスとの出会いでもあった。

(中日新聞・東京新聞の2001年6月17日日曜版に掲載)

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