旅チャイナ(トップ)|チベット青蔵鉄道|チベット入域許可書|カイラス倶楽部| <吉林省・延吉──キムチと「明太」の町>
延吉から長白山へ行く途中のことである。農家の庭いっぱいに棚がかけられ、ビッシリと何かが干してある光景に出会った。千枚二千枚というのではなく、何万枚何十万枚という感じである。バスを止め近づいてみると、これがタラであった。寒風の中、空を覆うタラの大群。なかなかに雄壮である。ロシアで捕られたタラがここ中国・延吉で加工され最後は韓国へ輸出されるのだという。タラも大変だ。
延吉は朝鮮族の町である。人口三十八万のうち十九万が朝鮮族である。日本の所謂韓国併合が一九一〇年のこと。その時期に多くの人々が混乱を逃れこの地に移住してきた。今ここに暮らす人はその三代目・四代目である。今でも朝鮮の生活様式を捨ててはいない。街に掛かる看板の半分はハングル文字である。焼き肉屋が多い。「犬肉」の看板も目につく。
「良いことばかりではないですよ」。地元の人が言う。
韓国の男性と結婚をする女性が増えているという。言葉の問題もない。習慣の壁もない。その上こちらの女性から見ると羽振りがエライよい。コロッといってしまう。特に農村ではその傾向が強く、若い男しか残っていない村が幾つもあるという。男からすれば深刻な問題である。ところが、そこは巧くできたもので、北朝鮮からの密入国者の女性も多く、そのあぶれた男たちは彼女たちと何年か暮らすのだそうだ。言葉の問題も習慣の壁もない。
市場は街の縮図。延吉の市場は面白い。他の町とはチョット違う。キムチの専門コーナーがある。ダイコンのキムチ、キュウリのキムチ……。十種類を超えるキムチが並べられている。農家で見た干した「明太魚」が山のように積まれている。朝鮮の人はそんなにタラが好きだったのか。貝のむき身みたいのものもある。聞くとこれもタラ。タラの肝だという。タラの腸もある。どれも唐辛子の赤に染まって、見ているだけでもヒリヒリしてくる。もちろん、明太子もある。これも真っ赤だ。 (「北京トコトコ」2003年3月号に掲載)
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