旅チャイナ(トップ)|チベット青蔵鉄道|チベット入域許可書|カイラス倶楽部| <黒龍江省・ハルピン>
「今年は寒いですよ」 毎年一月から二月にかけて「氷雪祭り」が開催される。雪の彫刻展が開かれ、パリの凱旋門やチベットのポタラ宮を模した氷の建築が建ち並ぶ。馬ぞり・犬ぞり、氷上ヨット、氷の滑り台など北国ならではの様々な遊びも用意されている。なかなか楽しい。なかなか楽しいが、とにかく寒い。雪の彫刻を見学しながら持参した温度計をのぞく。マイナス二十五度。しかし、これは私の温度計がマイナス二十五度までしか表示できないからそうなのであり、実際にはマイナス三十度をこえているという。靴下を四枚重ねてはいている。ズボン下は二枚。シャツを二枚に厚めのスポーツシャツを一枚、セーター二枚にダウンのジャンパー。その上にマフラーを巻いて、頭には耳までおおえる毛糸の帽子。それでも寒い。
「ちょっと寒すぎますよね」 となると、ハルピンの人々のなかでも、もっとも寒さを楽しんでいるのは、寒中水泳をしている人たちということになるのだろう。ハルピン市を東西に貫く河は松花江。全長二千キロ、この辺りの河幅は八百メートル、平均水深四メートルの堂々たる大河である。これがコチンコチンに凍る。氷の厚さは一メートル。大型トラックも渡れる。その氷を長さ二十メートル、幅十メートルに切り取ってプールを造る。豪快なものだ。そこで泳ぐ。見ているだけで鳥肌が立ち、心臓が痛くなる。他方、泳ぐ方は元気だ。二十代の女性から七十を過ぎた老人まで、氷を積んだ飛び込み台から、いかにも楽しそうに、次々に飛び込んでゆく。本当に楽しいのか大勢の観客の手前のやせ我慢なのか。ともかくも、厳寒ハルピンの究極の楽しみ、というところか。 (中日新聞・東京新聞の2001年3月11日日曜版に掲載) |
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