旅チャイナ(トップ)|チベット青蔵鉄道|チベット入域許可書|カイラス倶楽部| <広東省・広州> 歩いて廻るうちに、ペットショップにいるような気になってくる。茶色の子犬が籠のなかからこちらを見ている。白ネコが丸くなって眠っている。何なら、動物園と言ってもよいかも知れない。ヘビがいてアルマジロがいてハクビシンキツネがいてクジャクがいる。
しかし、ここはペットショップでも動物園でもない。ほらっ、そこにウサギが皮を剥かれ逆さに吊されている。ペットショップではこんなふうにはウサギを売らない。れっきとした市場である。ただ、日本の市場とは売っているものが少し違う。エビが売られるようにサソリが売られている。大きな盥のなかでサソリがグチャグチャっと動いていて、お客が生きのいいのをよって箸でつまみ取っている。
ふと思う。私たちは「ゲテモノ」と呼ぶ。では、現地の人たちも「ゲテモノ」と思って食べているのだろうか? なるほど。市場は人々の生活の縮図である。人々の生への情熱の表現でもある。食材の珍奇性に目を奪われがちだ。でも、本当に驚くべきは、広州の人々の食べることに対する情熱なのだろう。虫であれ鳥であれ四つ足であれ、この世にあるものは食い尽くさずにはおかぬ、という飽くなき欲望。あるいは、広州人の「性の悲しさ」とでも言うべきか。恐ろしくもあり不思議でもあり逞しくもある。何度行っても、底知れるエネルギーと熱気に圧倒されるのが広州の市場。楽しいが疲れる。 (中日新聞・東京新聞の2001年5月20日日曜版に掲載)
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