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<江蘇省・南京>

 この街には文化を感じさせる何かがある。街の南、秦淮河のほとりは、明代より全国に知られた歓楽街であった。妓楼酒楼が軒をつらね、洩れ出た管弦の音が川面に流れる。川面のさざ波は揺れながら赤や青の灯燭の光を映す。その上を屋形船が妓女と酔客を乗せ滑るように過ぎてゆく。

 多くの画人文人が集まり、江南の経済力を背景に爛熟した文化を花開かせてゆく。『板橋雑記』には当時の名妓たちの生涯、放蕩に親譲りの財産を使い果たす男たちが描かれる。この書を読むと、歓楽と哀愁、風流と傷心、そういったものを織り交ぜながら、あまりに膨大なエネルギーが弦楽の響きのなかで浪費されていったことを知るのである。歓楽は文化なのだろう。

 この歓楽街に隣接して郷試の試験場である貢院があった。郷試とは科挙の地方選抜試験を言う。各省ごとに行われ、これに受かると北京での会試、さらには殿試へと進む。布団や炊飯道具を持ち込んで、独房のような小部屋に閉じこもる。前後あわせて一週間、必死に答案を練る。南京の貢院は二万室の「独房」を擁していたというから凄い。

 科挙制度は千三百年も続いた。ある意味で非常に平等な官僚採用のシステムであった。逆に言えば、受からなければ出世の道は閉ざされていた。それだけに競争は厳しい。なかでもこの地での競争は熾烈を極めた。文化の程度がどこよりも高かった。最終試験である殿試の最高成績者を状元というが、その半分近くが江蘇の出身であった。そのために費やされたエネルギーの総量たるやそら恐ろしいほどである。試験も文化か。

 秦淮の河に沿って歩くと、歓楽の街と科挙の試験場が並んでいる。奇異に感じる必要はない。名妓も状元も同じなのだ。中国という文化を支えるために費やされたエネルギーの二様の姿なのだろう。

(中日新聞・東京新聞の2002年4月14日日曜版に掲載)


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