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<寧夏回族自治区・銀川>

 モンゴルの草原に身を起こし瞬く間にユーラシア大陸を席巻し尽くした英雄の死は西夏王国との戦いのさなかであった。「西夏を潰滅せよ」。それが遺言であった。

 西夏はチベット系タングート族が建てた国。歴史の舞台に現れたのは十一世紀の初めである。シルクロード交易の要衝である河西回廊を支配し繁栄を誇った。独自の文化を花開かせ、西夏文字と呼ばれる文字も持った。都であった銀川の西三十キロ、賀蘭山の麓に連なる歴代の王の陵墓は独特の様式に彩られていた。

 ところが、王国は一瞬にして舞台から消え失せる。ジンギスカンの軍隊は、遺言に従い兵民を問わず老若を問わず西夏人という西夏人は生かしてはおかなかった。また、歴代の王の陵墓に対しても、徹底した破壊を加えた。賀蘭山を背にし黄河を前に置いた風水の良さを恐れたのだという。「これを残すことはモンゴルに禍根を残すこと」。十万の軍隊を投入し三ヶ月の間壊し続けた。最初は火をつけ、次には叩き。こうして、西夏の文化も文字も陵墓も何もかもが地上から消え、謎になった。

 訪れたのは晩秋。なるほど、賀蘭山の伸びやかな稜線は美しく威厳に満ちている。その賀蘭山を背に、陵墓の土の芯が廃墟の相そのままに、静かに立っている。これを覆って木製の楼閣が建てられていたのだという。

 そこで遺跡保護のための工事が始められていた。ツルハシを手に作業をしている労働者は、白い帽子を被った回族の人々である。その作業を見ているうちに不思議な感慨に包まれた。チベット系の民族の国をモンゴル族が破壊し、八百年経って回族が修復をしている。一生懸命に造ったものを、丁寧に破壊し、また修復をしている。人類の愚かさと言うべきなのだろうか。それとも人類の歴史の誇りと言うべきなのだろうか。

(中日新聞・東京新聞の2002年1月20日日曜版に掲載)


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