旅チャイナ(トップ)|チベット青蔵鉄道|チベット入域許可書|カイラス倶楽部| <内蒙古自治区・夏のシリンホト> 見渡す限りの草の原が緩やかな起伏を打って続いている。満目の緑。その緑が、風が吹くと一斉に揺れる。地平線までの草の原が揺れる。蒙古の草原は、果てしもなく広い。
その草原でモンゴル人は羊の群れを追う。
そんなことが知りたくて、ある羊飼い一家のパオの隣にもう一つパオをたてさせてもらいそこに一週間ほど寝起きをしたことがあった。 五、六年経った今でも夕焼けを見ると、蒙古の真っ赤な空を思い出す。思い出しながらいつも不思議な思いに引きずり込まれる。蒙古はいかにも異境の地だ。私たちとは異質な時が天地に満ちていた。それにもかかわらず、赤い光のなかで女たちが乳を搾るあの夏の夕暮れは、なぜこうも懐かしいのだろう、と。 (中日新聞・東京新聞の2002年7月7日日曜版に掲載)
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