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<山西省・大同>

 初夏の日差しのなかで大仏たちは静かにほほえんでいた。一千五百年のほほえみ。敦煌の莫高窟、洛陽の龍門とあわせ中国三大石窟と呼び慣わされるがそれぞれに味わいは異なる。敦煌の莫高窟は壁画や塑像が中心である。礫岩が彫像に適していないのだ。また、同じ彫像でもここと龍門とでは仏像の姿が明らかに違う。

 雲崗石窟の仏たちは大きくて力強い。その上、表情にはどこか西域のかおりが漂う。エキゾチックなほほえみは蠱惑的なまでに美しい。

 その優しいまなざしに包まれながら、ふと前日に見た大同郊外の風景が脳裏に浮かんできた。一歩街を出れば、黄土高原が丘をなし谷をなしどこまでも続く。その黄色い大地に土を固めた狼煙台が点々とアクセントを刻む。殺伐としている。「古来、漢族と北方の異民族が存亡を賭けて兵戈を交えてきました。戦争の回数は八百とも千とも言われています」。ガイドさんの説明だ。千回の戦争。どれだけ多くの血が流されてきたことか。

 仏のほほえみ。繰り返されてきた血みどろの白兵戦。それが同じ場所であることは……。そんな想いに浸っているうちに、もうひとつ、ガイドさんから聞いた説明が連想的に思い出された。 大同の特産を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「石炭と美人です」
 名高い石炭の方はともかく、あらためて周りを見回すと、確かに目鼻立ちの整った女性が多い。なぜだろう。
「民族が混血をしてきたからだろうといわれています」

 なるほど。匈奴、羌、鮮卑、契丹、女真。この地で覇を競った民族の名を挙げればきりがない。雲崗石窟を造営したのも鮮卑である。とっくの昔に滅んでしまった。あとに残ったのが、大仏のほほえみと狼煙台と美人いうことか。それらが今に渾然と溶け合っている街。それが大同である。

(中日新聞・東京新聞の2001年7月15日日曜版に掲載)


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