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<貴州省(1)黔東南苗族トン族自治州>

「天に三日の晴れなく、地に三里の平地なく、人に三銭の金なし」。こんなふうに言う。
 行ってみると本当にその通りだ。走っても走っても山また山。人が暮らしているのが不思議なほどだ。
 暮らしているのは苗族、トン族などの所謂少数民族。山を削っては山の天辺の天辺まで段々畑にしている。十月初旬。刈り入れの季節であった。段々ごとに黄色い稲穂が揺れ、全山が黄色く揺れていた。
 「それにしても……」、と思う。この段々畑を作るために費やされたエネルギーの総量たるやいかばかりか。親から子へ、子から孫へ、何百年をかけ営々と耕し続けてきたのだろう。そもそもこの地を耕地にしようとしたのが何かの間違いだったのではないのか、と。
 一説に言う。『史記』の本紀、黄帝は獰猛な異民族・蚩尤を滅ぼし帝位に就いた、という記述のその蚩尤こそが苗族である、と。漢族との戦いに敗れ、敗走し、やっと辿り着いた平安の地がこの山であったのか。だとすれば、やはりここで段々畑を作っているのは何かの間違いだったのだ。
 貴州に暮らすのは、苗族のような「負け組」だけではない。省の西部は広大なカルスト地形。石の大地。ここもまた耕す地がない。ここに老漢族という民族が暮らす。老漢族の祖先は、明の創始者・朱元璋が派遣した軍隊であるという。いわば「勝ち組」である。やがて隔絶され、今でも明の時代の言葉を使い、明の時代の服装を身につける誇り高い明王朝の末裔。
 その「勝ち組」も同じく貧しい。三本のトウモロコシを植える土地があれば三本のトウモロコシを植え、四本の土地があれば四本を植える。そして、壁も屋根も全部石だけでできた家に暮らす。
 それぞれの歴史。それぞれの栄辱。それにしても、勝者にも敗者にも、時と自然は意外と平等なのかも知れぬ。

(「中日新聞・東京新聞」の「日曜版」2002年11月24日に掲載)


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