旅チャイナ(トップ)|チベット青蔵鉄道|チベット入域許可書|カイラス倶楽部| <甘粛省・劉家峡ダム> 砂漠化の波が激しく中国を襲っている。そして、それに応戦するように全国で緑化運動が展開されている。 最近の標語は「畑を林に戻せ」。陝西省や甘粛省の黄土高原で「耕して天に至る」という風景によく出会う。親から子へ子から孫へ、何百年もかけて耕してきた。ところが、それが砂漠化の原因なのだ、と言われ始めた。耕地を林に戻さなければならない、と。勿論たやすいことではない。畑に耕せば穀物が穫れる。林に戻したら…? 難問を抱えながらも事態は後に引けないところまできている。 今回訪れた劉家峡ダムもそんな戦いの前線のひとつである。ダムは一九六八年に黄河を堰き止めて造られた。しかし、近年黄河への土砂の流入が激しく、すでに三分の一は土砂で埋まってしまった。流域の砂漠化が原因である。いま懸命にダムの周り山々への植樹が進められている。が、なにせ見渡す限りの禿げ山である。何十年かかるのか、何百年かかるのか。気の遠くなるような挑戦である。 ここで日本からのボランティアのグループに出会った。「沙漠緑化ナゴヤ支援の会」のメンバー十七名。内蒙古などでも植樹活動をしてきたという。強い日差しのなか黙々と、同時に、生き生きと楽しそうに穴を掘り木を植え水を運んでいた。四時間かけ、地元が用意した三百六十五本の苗木を植え尽くした。 「これだけ広いのだから三百本ぐらい植えてもどうにもなりませんが、植えなければもっとどうにもなりません」。こう語る言葉が印象に残った。 何百年もかけて耕してきた畑を、それをまた何百年かけて林に戻そうとしている中国。そこで、自分のお金と時間を使って植樹の活動を手助けする日本人。大きな構図の世界があるものだ、と感心させられた。 (中日新聞・東京新聞の2001年11月18日日曜版に掲載)
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