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<陝西省・西安>

 西安には回族の人々が群居している街がある。名を化覚巷という。門前町と言っていいだろう。その奥まったところに清真寺がある。清真寺とは固有名詞ではなく、中国語でイスラム教のモスクをいう。

 独特の雰囲気が漂う不思議な街だ。シシカバブーを焼く煙が立ち上り、ナンが売られる。男は小さな白い帽子を頭に載せ、女は頭からベールをかけている。

 彼らの祖先がペルシャやアラビアからこの地へやってきたのは唐の安史の乱の頃であるという。つまり千二百年も前のことになる。それでも、深い彫り、目に黄色みを帯びた男が目に付く。驚くほど肌の白い女も多い。歳月と同化に抗しながら、祖先の姿を、必死になって身体のどこかに留めようとしているかのようだ。いや、容姿だけではない。

「私たちの祖先は、異国の地で、アラーの神の教えを親から子へ、子から孫へと伝え守ってきました」
 礼拝堂の前で出会った七十四歳の老人は、白い顎髭を撫でながらこう言う。痩身で静かな物腰だが目にはどこか異教徒の輝きを宿している。礼拝は一日五回、決して欠かさぬ。その日二回目の礼拝にやって来たところだった。
「礼拝とは、何かを祈るのですか?」
「アラーの神と向かい合い、ありのままに我が罪を告白し、ひたすら許しを請うのです。それが礼拝です」
 スピーカーから聞き慣れぬ言葉が流れてきた。
「礼拝が始まります」
 まさか、アラビア語?
「千年の間に陝西の訛りが相当入ってはいますが……」
 礼拝堂は西を向いている。メッカに祈るのだという。
 メッカはいかにも遠い。

 アラーの神、アラビア語の礼拝。千二百年の時を経てなお残るペルシャの肌の白さ。この街の存在そのものが、何かの奇跡のようだ。

(中日新聞・東京新聞の2001年7月1日日曜版に掲載)


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