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<海南省・三亜>
海南島は別天地である。海がきれいとか、一年中泳げるとかそれだけではない。時の流れ方に独特な風格がある。
中国最南端の島が海南島、そのまた南端の三亜の海岸線に沿って十数キロにおよび芝生と椰子の林の遊歩道が作られている。
椰子の木陰にハンモックが吊られ、その上でけだるく揺れているのは北京などからの旅行客。今までの中国にはなかった観光のスタイルだ。
海辺で、真っ黒に焼けた男が浮き輪と網でノンビリと魚を捕っている。「これが仕事ですか?」。毎日、日本円で三百円ぐらいにはなるのだそうだ。「いや、遊びさ」。畑でスイカやトウモロコシを作っている。食うにはそれで十分だ。
芝生の世話のために現地の人が大量に雇われている。各々担当の区画がハッキリと決められているところが面白い。「ワシたちのところは、この街灯からあっちの街灯までさ」。百メートルほどだろうか。毎日八時間の労働。ただ、その区域だけの芝生に水をやり草を取ればよい。妻がホースで水を撒く。夫は三人の娘と椰子の実を採って遊んでいる。一番年かさの子が木によじ登って実を落とす。下の二人がそれを拾う。男はそれをナタで割って汁を飲ませる。「自分の管理している区画の椰子は自分で採っていいのですね?」。「そりゃダメだよ」。
やがて夕陽が海を染め、椰子の林がシルエットに変わる頃、観光客はハンモックを降り海岸の散歩を始める。魚採りの男は網を担いでどこかに消え、芝生の管理人一家は五人手を繋いで家路につく。
海南島は、確かに別天地である。
黄土高原にも長江の港町にも夕暮れは来る。一日の労働を癒すかのように。でも、ここの夕暮れはちょっと違う。「ああ、よく遊んだ。明日もまた思いっきり楽しもうな」。こんなふうに暮れてゆく。
(中日新聞・東京新聞の2003年1月26日日曜版に掲載)
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