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<上海>

 泊まること自体が贅沢。世の中にはそういうホテルがあるものだ。施設が豪華なわけではなく、料金が高いわけでもなくとも。和平飯店はそういうホテルのひとつである。

 戦前、長崎から上海への定期船が毎日出ていた。およそ一昼夜、船は東シナ海から長江を上り、呉淞からはその支流である黄浦江を遡る。ほどなく、デッキの乗客の前に世界の大都会・上海の偉容が姿を現す。黄浦江沿いのバンドに十数階建ての石造りのビルが建ち並ぶ。スエズ運河とベーリング海峡の間にあって最も美しい建築と讃えられたのは香港上海銀行。時計台のそびえる建物は税関。三角屋根が印象的なのはサッスーンハウス。不動産王として上海に君臨したユダヤ人サッスーン財閥の居城である。今の和平飯店である。

 これらの建築群が空を切り取るスカイラインの優美さとは裏腹に、この街は魔都とも呼ばれた。バンドの奥には歓楽の世界が広がっていた。キャバレー、ダンスホールが軒を連ね、夜になればネオンの海となった。さらに一歩裏に廻れば中国人の貧民窟がありアヘン窟があった。繁栄、蕩尽、欲望、消耗。人の世のあらゆる栄光と悲惨を混然と飲み込んだ街であった。それらを高みから見下ろし続けていたのがサッスーン・ハウスというわけである。

 和平飯店に泊まる。夜は一階のバーでオールドジャズを聴く。金子光晴の『どくろ杯』でも読みながら眠りに就く。朝は船の汽笛で目を覚まし、八階のレストランで朝食をとる。窓の下にはバンドがあり黄浦江がある。黄浦江の向こう岸には新中国の次代を担う国家的プロジェクト、浦東開発区の超現代的な建物群が林立している。上海という風景、上海という歴史、上海という不思議。その中に自分もいる。そんな気分にさせてくれる。和平飯店に泊まる贅沢である。

(中日新聞・東京新聞の2001年7月29日日曜版に掲載)


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