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<湖北省・宜昌>

 宜昌の朝は霧の中から明けてくる。霧に霞んで流れる長江は優しい。

 長江は重慶、万県、奉節と下りながら次第に幾多の流れを集め、やがて怒濤の水量をもって一気に三峡へとなだれ込む。峡谷を抜け、岩を噛み、荒れ狂うように駆け下ってきた流れが、ようやく山岳地帯を過ぎ、ホッと一休みするところ、そこが宜昌である。

 山と平野の境。重慶のような荒々しい流れではない。武漢の茫々たる趣もない。ここでは、肩の力を抜き憩うように流れる。町も、重慶や武漢のような大都会ではない。河に寄り添い、ひっそりと息づいている。河の姿と町の姿、不思議なほど、似合っている。

 昔より大型船舶もここまでは遡航が可能であった。湖北から大きな船で運ばれてきた物資は、ここで小舟に積み分けられ四川へ上った。逆もしかり。その地理的特徴ゆえに、さまざまな歴史を背負ってきた。古来より兵家必争の地であった。日本軍の重慶爆撃の基地にもなった。そして、今は、近くに三峡ダム建設が進む。完成すれば、水位が上がり、上流の景観は一変するという。

 そんな過去と未来を想いながら港に立つ。知ってか知らずか、長江はただ静かに流れている。

 ポンポンポンポン。霧の中から蒸気船の音が聞こえてくる。音は次第に大きくなってくる。船が姿を現す。近郊からの定期船なのだろう。勤め人が自転車を押しながら降りてくる。カバンを抱えた中学生もいる。天秤棒に野菜を担いだ農家の娘さんも降りてくる。列になって長い桟橋を渡り、そして、それぞれに宜昌の街へ散ってゆく。ポンポン蒸気のリズム、自転車を漕ぐリズム、天秤を担ぐ肩の揺れのリズム。朝の活気が戻ってくる。港町の一日が始まる。

 宜昌の町が霧の中から明けてくる。

(中日新聞・東京新聞の2001年4月8日日曜版に掲載)


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